松盆栽の生産量で日本一を誇る高松市の鬼無・国分寺地区で、1月から本格的にEUへの輸出がスタートする『黒松』の出荷作業が行われました。
松盆栽のEUへの輸出はこれまで五葉松や真柏が主流で、黒松は病害虫の懸念から輸出できませんでした。
ですが、県などの働きかけで2020年10月にEUへの輸出が解禁され、約2年間の栽培管理を経て、ようやく出荷の時を迎えました。
海外での盆栽人気
盆栽は今や海外でも人気のあるクールジャパンを代表するコンテンツの一つと言えるでしょう。
ただし、その背景には国内市場の縮小、愛好家や生産者の高齢化など課題が山積みです。
とりわけ松盆栽の産地で有名な高松でも後継者不足も含め大きな課題を突きつけられています。
『このまま盆栽の生産が終わってしまうのではないか』そう心配する声すらありました。
そこに来てのオランダとスペインへの『黒松』出荷作業が行われました。
今回、出荷される松盆栽は約500鉢で、黒松はその半数を占めています。
輸出解禁などにより、全体の出荷量は前年比より約1.5倍に増えたという事です。
1~2万円ほどの持ちやすいサイズの盆栽が人気
特に多く買い付けられたのが高さ50cmほど、日本の価格で1、2万円ほどの持ちやすいサイズのものでした。
また、円安の影響で高価なものも以前に比べて売れたといいます。
香川県によると、県内では国内での盆栽の需要減少や高齢化に伴って盆栽農家の数が徐々に減り、さらに出荷量も約10年間で4割ほど減っています。
それでも、輸出用の盆栽を栽培する農家は県内では20軒ほどと、解禁を機に増えていて、今後もさらに増える見通しです。
記録的な円安の影響も
2022年、高松盆栽輸出振興会会長の園にはEUから7社のバイヤーが訪れ、コロナ禍前の2019年の3社から倍増しました。
そんな中、海外販売の追い風となっているのが記録的な円安です。
輸出量は2021年と比べて1.5倍ほど増えていると言います。
会長の言によりますと、『施設を守るのも、町を守るのも、盆栽で食べていけるという方向性を作る事が大切。この輸出の方向で食べていけるとなれば、町にとっても、施設にとっても良い事』と述べられています。
JA香川県などは昨年10月22日からの2日間、盆栽を展示・販売するイベントを行い国内の販路拡大にも取り組んでいます。
輸出にも力を入れる高松の盆栽。
記録的な円安は今後の海外展開にも影響を与えそうです。
そして、会長はこうも仰っています。
『EUのかたが欲しがるような物を作り上げていくという事も大切だろうと考えています。しっかり作り上げた黒松盆栽を楽しんでいただけたら本当にうれしいです』と。
今回箱詰めした盆栽はコンテナに積み込んで運ばれ、現地で夏頃から販売される予定です。
決して手放しで喜べるニュースとは言えないのかもしれませんが、それでも日本に深く根付いた『盆栽』が海外にその根を伸ばすのは明るい話題とも言えますね。