盆栽を趣味にしているうち、鉢にも興味が湧く方は多いと思います。
今回は、盆栽鉢の名門の一つ「美芸(びげい)」についてまとめました。
いかにも綺麗そうな名称ですが、どんな経緯と特徴があるのでしょうか。
「美芸(びげい)」とは
美芸とは、盆栽鉢の作家及びその作品名のことです。
本名:平田涼美。
昭和14年9月25日生まれ。
昭和33年に焼物の道に入り、ロクロ技術を身につけます。
独習との説もあり、初歩程度は一人で身につけたのでしょうか、今では信じ難い話です。
昭和44年には、樹鉢(植木鉢)の素地(生地)作りを開始。
昭和50年に独立し、開窯。
肩書は常滑小鉢作家となります。
常滑の鉢といえば、以前にも取り上げた「秀峰」も含む常滑焼、ひいては常滑焼を含む日本六古窯(備前焼・瀬戸焼・信楽焼・越前焼・丹波立杭焼)の一つに数えられます。
いわば名工の一人です。
昭和の良い時代に作家となった経緯もあり、作品は多く残されています。
美芸鉢といえば、朱泥(しゅでい:鉄分を多く含有する土)ぼかしの小鉢が有名で、泥物を専門としています。
作品は総じてシンプルな形や模様のものが多いとされます。
小鉢だけでなく、30cm前後の大きな鉢も制作し、形も正方形、長角、六角、八角、丸など多彩です。
現在でも通販などで多く出回り、盆栽に用いるのに適した様々な鉢が手に入ります。
美芸も含まれる「常滑焼」「日本六古窯」
常滑焼とは、愛知県常滑市周辺地域で作られる陶器を指します。
知多半島で採れる鉄分を多く含んだ陶土を使い、赤く発色した「朱泥」の生地が特徴です。
美芸ももちろんその一種で、滑らかで美しい赤色が盆栽の濃い緑色に映えます。
【備前焼(びぜんやき)】
…岡山県備前産の炻器。釉薬を一切使わず「酸化焔焼成」によって、茶褐色や赤みのある色合いが特徴。
【瀬戸焼(せとやき)】
…愛知県瀬戸産の陶磁器。歴史はありますが、今では湯飲みや茶碗など、瀬戸で作られる焼き物の総称となっています。
【信楽焼(しがらきやき)】
…滋賀県甲賀市信楽産の陶器。狸の置物が代表的で、焼き物としては焦げや変色も活かした豪快な印象を持ちます。
【越前焼(えちぜんやき)】
…福井県丹生郡越前産の陶磁器。鉄分が多く含まれ、赤褐色が特徴。平安時代から存在しましたが、昭和後期までほぼ無名で受け継がれていました。
【丹波立杭焼(たんばたちくいやき)】
兵庫県丹波篠山市今田地区産の陶器。丹波焼、立杭焼きとも呼びます。登り窯の高温で長時間焼くため、「灰被り」と呼ばれる独特な模様と色味が特徴。
関連記事
「盆栽鉢の名門「秀峰」(しゅうほう)とは」
https://bonsai-navi.com/archives/762
まとめ
今回は、常滑焼の名工「美芸」についてまとめました。
常滑焼全体にいえることですが、あまり表立って情報が公開されないという特徴があります(日本六古窯に入るかどうか議論になったことも)。
ですが常滑焼独特の朱泥の色味は美しく、また美芸ならではの無骨で簡素な小鉢作りは魅力です。
小さな盆栽を育てている方は、ぜひ美芸の鉢を試してみてはいかがでしょうか?
Image Credit:https://amazon.co.jp